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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第84号

2024.10.31 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
今回は「ゴミ」にまつわる話題を二つ。
一つ目は、大村はま先生の「ほめるタネをまく」をほうふつとさせる田中博史先生の「ゴミ拾い」の極意です。


ほめて動かしまたほめる

子どもをほめたいと思っても,実際にほめる姿がなければできません。だから、そういう姿を意図的につくりだすのです。「子どもを動かしておいて,その動かした子どもの姿から,こういうのがいいなと思う子を探してほめる」ということです。
私は,保護者会でも「子どもをほめて育てなさい」とよく言います。しかし,保護者の中にはほめ方が苦手な方もいらっしゃるようなんです。子どもの日記に「最近,お母さんが歯の浮くようなことばっかり言うんだ」と書いてあることがありました。空々しいこと言われても,実感が伴わないと子どもの心に響きません。


6つ目のゴミを拾う子を探す

ほめるポイントは,先生を越えることの価値観を伝えることです。
例えば「ゴミを5つ拾いなさい」という指示をしたとします。すると子どもはすぐに動きます。教師が数字を入れて子どもに指示を出すと,その数字が子どもの目標になるので,今までよりも子どもが動きます。ただ「教室が汚れているからゴミを拾いなさい」と言っても子どもはあまり動きません。「5つ拾いなさい」と具体的に指示すると,子どもはさっと動きます。これも,大切な技術です。
しかし,5つ拾って満足し,6つ目があっても拾わない子にしてしまっては意味がありません。だから,こう指示する場合でも,「心ある教師は6つ目を拾う子を探す」と若い先生たちには言ってきました。
「でも,田中先生,教室で子どもが活動しているときに,6つ目を拾う子を探すなんて無理です」という声があがります。
みなさん,本当に探せないと思いますか?実は簡単に探せます。ゴミ箱のすぐそばを見ていればいいのです。子どもはゴミを拾ったら,それを持ってきてゴミ箱に捨てます。捨てる子はもう5つ拾った子です。そのうち,ゴミ箱の周りが必ず汚れます。そこに落ちているゴミを見て拾う子がいれば,それは6つ目のゴミですね。それで,その子をほめるんです。
ただし,その時点では黙って見ておきます。終わった後で,ゴミ箱のそばに行って,「ゴミ箱の周りが汚れているのを見かねて,6つ目や7つ目を拾ってくれた子がいるよ」とほめてあげます。
教師の指示をきちんとこなすことに加えて、自分の判断でさらにプラスの行動することの価値を,伝えるのです。
このように声がけしていくと子どもは育っていきます。私は,さらに,その数字自体も子どもに決めさせたらどうかと思っています。
図工のあとなどに,「みんな教室を見てごらん。ずいぶん汚れてるね。一人いくつずつ拾うと,教室がきれいになると思う?」と子どもに尋ねます。子どもが「7つぐらいかな」と言ったとします。「では,みんなで7つ拾おう」とやります。それでもゴミがまだ落ちているなら,「先生,1人7つじゃ足りないよ」と子どもが数字を修正するでしょう。
算数の授業でも子どもに数字を決めさせることがあります。学級のルールもそうです。子どもが自分たちで決めたことは,自分たちで修正することができるからです。先生から「こうしなさい」と言われたことは,その先生がルールを変えてくれない限り,変えられないのです。


『田中博史の算数授業のつくり方』田中博史著(東洋館出版社2009)p.012 一部編集


二つ目は、ネットニュースをチェックしていて目に留まった埼玉新聞の記事。
あれから8年も経つというのに、湯本さんの純粋な気持ちを感じ、今でも胸が熱くなります。


高1が涙,道に散乱した紙拾い集め … 見ないふりつらい

埼玉県の鴻巣署は4日,県道に散乱していた古紙を一人で回収した行田市在住,県立鴻巣高校1年の湯本里咲さん(16)に感謝状を贈った。見て見ぬふりをして通り過ぎる自分を受け入れられず, 後先のことを考えずに一心不乱に拾い始めたという。

自転車で通学している湯本さんは昨年12月21日夕方,鴻巣市内の県道を通りがかった際,新聞紙や折り込みチラシが半径約3mにかけて大量に散乱しているのを目の当たりにした。一度はそのまま通り過ぎたものの,「何もしていない自分に辛くなった」と戻って来た。

はじめは古紙を自転車の前かごに積んで自宅に持ち帰ろうとしたが,収まり切れない。約500m離れたコンビニでごみ袋を買って戻り,再び拾い集めた。現場は交通量の激しい通り。湯本さんは青信号になるたびにひたすら拾い続けた。

午後5時20分ごろ,同署に「女子高生が落とした荷物を一人で拾っている。かわいそうだから助けてほしい」と連絡が入った。署員が駆け付けると,すでにごみ袋3袋分,計10キロの古紙が回収されていた。持ち帰り方法を考えていた矢先に署員が到着。安心した湯本さんの目からは涙が流れた。

バスケ部に所属している湯本さん。学校周辺のごみ拾いをしてから朝練に取り組んでおり,「普段やっているので当たり前と思って拾いました」と振り返った。

市村知孝署長から感謝状を贈られ,湯本さんは「周りの事をもっと見られる一年にしたいです」とほほ笑んだ。


2016年1月6日 埼玉新聞朝刊 一部編集

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