仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第71号
2024.07.25 THU
通信教育指導室から、こんにちは。
「しんぶんし」や「たけやぶ やけた」のようなことばや文を,回文(かいぶん)と言います。
こんなのもあります。
「なくな こねこ こねこ なくな」
「じいさん てんさいじ」
考えた人、すごいですねえ。
実は,算数の世界にも,回文ならぬ、回式(かいしき)というのがあります。
問題から子どもの論理を引き出す
「回文」の算数バージョンに「回式」があります。左から読んでも右から読んでも数字の並び方が同じ式のことを言います。早速、問題です。
問題 (式) ABCD × 9 = DCBA |
子どもたちは、眉間に皺を寄せて考え込みます。ただ、やみくもに数を入れるだけでは、答えを導き出すのは難しそうです。
「じゃあ、早速答えを言おうかな…」と私が冗談を言うと、クラスはブーイングの嵐。
「ちょっと待って!」「ヒントをください!」
子どもたちは、やる気満々です。
当然ですが、授業で私から答えを言うことはありません。教師が答えを口にした途端、子どもたちから考える力が消えてしまいます。
しかし、一人で考えるには難しい場合もあります。そこで必要となるのが、ヒントです。
既に問題を解き始めた子に、手掛かりとなるヒントを言ってもらうのです。
「わかった子は、友だちのためにヒントを言ってあげよう。答えを言わないように気をつけてね。」
ある子が言います。
「Aを最初に解くといいです」
いいヒントですね。
「なるほど、Aから解くんだ。Aの数がわかった人は手を挙げてごらん。まだ少ないね。もうちょっと待ってみようか。適当に数字を入れてみるのもいいかもしれないね」
事前に教材研究をしていると、教師はつい、いろいろなことを言いたくなります。しかし、ぐっと我慢。授業づくりのポイント①は、一番言いたいことは子どもから出させることです。なんとかして、子どもを主役にさせなくてはいけません。
Aに入る数を見つけた子が増えた頃を見計らって、もう一度尋ねます。
「Aがいくつになるか、わかった人?」
「はい!」
「いくつ?」
「1です」
「本当に?」
「本当です。だって…」
授業づくりのポイント②は、子どもの答えに教師が疑問符をつけること。
「え?」や「本当?」と言うと、子どもははじめ困惑します。正しいのに、「え?」と言われると本当に正しいのかと思ってしまう。
しかし、答えに自信のある子はその後、必ず「だって」とか「なぜなら」と言います。そして、この後に続くのは、「論理」です。子どもからいかに論理を引き出すかが、教師にとって大きな勝負になってきます。
■ 筋道を立てて考えさせる ⇒ 算数の魅力UP

どうして、Aに当てはまるのが1なのか。ある子が説明しました。
「Aが1よりも大きい数になると、9×Aが、1桁でおさまらなくなるからです」
彼の言わんとしていることはなんとなくわかりますよね。
でも、教師はここで子どもたち全員が納得したと思ってはいけません。教師が一人で説明しても、全員を納得させるのは難しいのですから、子どもの言葉であればなおさらです。
私は、頷いていた別の子に問います。
「今の説明、わかった?じゃあ、同じ言葉でもいいから言ってごらん」
その子は微妙に言葉を変えながら、同じようなことを言いました。それでわかる子もいます。同じことでも、子どもの言葉が2種類出てくれば、わかる子は増えます。彼らの説明に多くの子がうなずきます。それでも、わかっているのはクラスの8割。残りの2割は、まだモヤモヤしています。
そこで、教師が子どもたちの説明をフォローしてあげます。
「今、彼はすごいことを言ったんだよ。もし、Aに2を入れてみると、2×9=18で、答えのABCDが4桁ではなく、5桁になってしまう。これじゃ、ダメだよね。じゃあ、3の場合だったら?3×9=27で、ダメだ。でも、1だったら?
1×9=9、ちゃんと4桁でおさまりますね」
納得した子どもたちを見て、私は続けます。
「これでABCDの1つがわかりました。4分の一がわかったね。テストだったら25点もらえるぞ!」
私の大げさな言い回しに乗せられて、何人かが挙手します。
「Aがわかれば、Dもわかるよ」

「え?本当?」
「Dは、9です!だって、Aが1ということは、1×9=9で、Dは9になるからです」
「おお!半分できたね。50点だ。次はどこがわかるかな?」
「Bです!」
「じゃあ、誰か、Bのところを説明できる子はいるかな?」
「はい。Bは、0です。理由は、9にBをかけて繰り上がりが1つでもあると、Aが2桁になってしまいます。繰り上がりのない9のかけ算は、0か1しかありません。でも、1はもう使っているので、0を入れました」
これでABCDのうち、3つがわかりました。残りは、Cです。

「Cはいくつになるかな?」
「8!」
「本当?何でわかったの?」
「一の位が9で、9×9=81で、8が繰り上がりました。Bが0なので、8とたして0にならないといけないと思いました。だから、なんとか2をつくらないといけません。9の段で一の位が2なのは8×9=72なので、答えは8です」
「お見事!よくわかったね!」
ABCDをすべて当てはめると、次のようになります。

Aがわかると、次がわかります。次がわかると、その次がわかります。そうやって解いていくと答えがわかる。
これは、算数の楽しさの一つです。筋道立てて考えることで、答えがわかるのが算数の魅力。たまにはこういった問題もいいのではないでしょうか。
