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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第41号

2023.12.07 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
今回紹介する船越準蔵先生(1926‐)は秋田師範学校を卒業後、国語教師として、秋田大学付属中学校など秋田県内の公立中学校で勤務されました。
退職後、現場で培った教育観を後進に伝えるために『教師になった可奈子への手紙』などの多くの著書を著しています。
少し古い話で恐縮ですが、教育の神髄をついた言葉を紹介しましょう。



可奈子さん。
あなたのように若い教師が,子どもに受け入れられるよい授業ができるように,自分を改革していくのには,授業を批評してもらうことが第一です。
されば,授業批評の権威者は誰か。
専門職の指導主事に見てもらうのもいい。研究会などの機会に大勢の先生に見てもらうのもいい。校内の先生方に見てもらうのもいい。学年部の先生や,教科部の先生方に,ときどきお願いして見てもらうのもいいでしょう。みな,授業批評の権威者です。


授業を批評する最高の権威者

しかし可奈子さん,私が強力に推薦したいのはその人たちではありません。
あなたの授業を批評する最高の権威者は,授業を受けている子どもです。
子どもの声にこそ,最も謙虚に耳を傾けるべきです。
「私の授業のよさが,子どもになんかわかってたまりますか」などと言ってはなりません。
指導主事や,校長や,同僚教師にはわかってもらえたけれど,子どもにはちっともわかってもらえなかった授業など,漫画にもなりません。
「授業についてこないのは,ほんの一握りだけです」
「私の授業を悪く言うのは,出来ない子と態度の悪い子ばかりなんです」
などと,当然のように言ってはなりません。
授業はその子たちのためにあるのです。



あなたの生徒は,あなたの授業も,ほかの先生の授業も,みんな見ています。
その授業が,よくわかる興味深い授業であるかどうかがわかるのは,その生徒だけです。
授業は生徒のためにあるのですから,生徒の側からよしあしを見るべきものです。
そして,よしあしの感覚は,数多くの授業に実際に触れることによって理屈なしに錬られます。
子どもは大人と違って,授業のよしあしを言葉で論理的に述べたりはしません。
この,権威者たちは授業中に,全身で批評をします。
あるときは身を乗り出して目を輝かせ,あるときは騒ぎ立てたり,居眠りしたり,冷たく無視したり,「わかりません」を連発したりします。
それが批評です。

教師であれば,翻訳者がいなくても,それはみんな言葉になって聞こえなければなりません。
「おもしろい。もっと勉強したい」
「早口だし,声が小さいし,説明も下手。その上、準備も悪くてちっともわからない」
「先生,どうして私を置いていくの。ちゃんと教えてよ」
「どうしてこんなに自分ばかりしゃべっているんだろう」


子どもの素顔を見、本音を聞く

可奈子さん。
あなたの授業に拒否反応や無気力を示す子がいたら,その子はあなたを一人前の授業者にする師匠です。
よい授業のしかたは,子どもと仲よくして,子どもから聞くのがいちばんです。
決して子どもをナメたり,憎んだりしてはなりません。
子どもたちから,その話を聞ける教師になれるかどうか,それが勝負の分かれ道だと私は思います。

子どもの素顔を見,本音を聞くことは,とてもむずかしいことです。
ことに,最も教育の手を欲している,勉強や行儀の出来の悪い子や,非行の子どもは,素顔や本音を表現することが不得意です。
心の奥底で「助けて」と呼んでいるのに,外に向かっては固く心を閉ざしてしまうのです。
教師に,不出来な悪ガキの経験のないことは,子どもにとっても教師にとっても悲劇です。
どんなにベテランの教師でも,はじめからおれは教師だ,私は先生だと,心の中に驕りを抱いていては,子どもと付き合うことはできません。


よい教師になろうと努力する人

よい教師になるには長い月日が必要です。
しかし,よい教師になろうと努力することは,明日からでも出来ます。
そして,子どもたちは,よい教師を尊敬するのと同じくらい,よい教師になろうと努力する人を慕います。



自信たっぷりの老練教師が生徒にソッポを向かれ,採用されて日も浅い新米の教師が生徒の信望を集めることがあるのは,不思議でもなんでもありません。
子どもばかりをよくしようとする人が,子どもにとって魅力的であるわけはありません。
子どもたちは,自分自身をよくしようとする大人を慕い,手本にします。

西洋の誰かがそのことを,「たえず進みつつある者のみが,人の師となることが出来る」と言いました。


『教師になった可奈子への手紙』船越準蔵著(公人の友社1988)p.201 一部編集

「授業は子どもたちのためにある」-これは真実です。
「子どもたちは授業の良し悪しを厳しく峻別する『最高の評価者』である」という指摘も核心をついています。
子どもたちは、考える面白さやわかる面白さを味わわせてくれる授業を心待ちにしているのです。

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