仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第35号
2023.10.19 THU
通信教育指導室から、こんにちは。
今回は、キャリア教育のエキスパートとして、全国の教育現場を飛び回り講演する鳥居徹也さんのエピソードをもとに、考えていきます。
子どもたちは、完全無欠の人間より、一所懸命努力もするけど時に失敗もする-そんな生きざまを身近に感じ、共感するようです。
子どもたちは失敗談を聞きたがっている
「人はなぜ働くのか?」
この問いに答えるべく、高校を中心に講演してきました。最初は、タイトル通り「働く」ことの意味を語ろうとしていました。
「家族を養うためには……」「お金を稼がないといけないね」「でもやっぱり夢も…」、そうした言葉は体育館を虚しくさまよいました。一方通行の言葉でした。
子どもたちは黙っていませんでした。
「あ~つまんねえ~」といって床に倒れ込む生徒も出る始末。「学級崩壊」ならぬ、「体育館崩壊」です。
彼らの態度を腹立たしく思う一方で、「そうだ、確かに俺の話はつまらない…」と冷静に振り返る自分がいました。
ある日、一向に話を聞こうとしない生徒と自分自身に腹が立ち、「逆ギレ」しました。
講演原稿を無視して、自分の失敗談をまくし立て始めたのです。
・自分の生意気な一言が原因となった上司との摩擦。
・ビジネスマナーの無知が引き起こした数々のトラブル。
・入社して半年が過ぎた頃に初めて任されたプロジェクトでの大失敗。やる気だけが先行した空回りが原因でした。
・そして、失敗を挽回すべく、もがけばもがくほど連発するミス。
・ストレスで、過食気味になり、うつ状態になったこと。
・朝起きると「会社をやめたい」という言葉が毎日のように浮かんだこと。などなど。
私は自分の失敗談を無我夢中で語りました。話術も何もありません。
必死でした。
「お前ら人生をなめんなよ。サラリーマンは身体を張って仕事してんだ!」-そんな気持ちでした。
しかし、これが予想外の反応を生みました。高校生が私語をやめてこちらに目を向けはじめたのです。
そして、私は思いました。
「そうか、高校生は俺の失敗談を聞きたがっていたのだ」
「子どもたちは失敗談を聞きたがっている」という鳥居徹也さんのこのことばは、核心をついています。
そうです。子どもたちは先生方の失敗話が大好きなのです。
一方で、子どもたちは、≪ 何度失敗しても、果敢に挑戦し続ける姿 ≫ にも共感し、胸を熱くし、精いっぱいのエールを送ろうとするものです。
鳥居さんは ≪ 挑戦 ≫ することの尊さを伝えるためにこんのひとみさんの詩を紹介しています。
パパとあなたの影ぼうし
運動会のかけっこあなたは みんなの一番後ろ走ってる
パパは本気で歯ぎしりしてる 真っ赤な顔をして走るあなた見て
パパはいつも何でも一等で 思い通り生きてきたから
不器用な息子を思うばかりに あなたにつらくあたるのね
逆上がりがすぐにできない子はできる子よりも
痛みがわかる分だけ強くなれることを
パパに伝えたいね いつかわかる日が来るよね
放課後 校庭 鉄棒に映る ママとあなたの影
パパは今度初めて仕事で 一等をとれなかったの
弱気な顔を見せてぐちって その方がずっと好きになれる
「ねえ、パパ逆上がりを教えて」 息子なりの励ましかしら
日曜の午後パパはしぶしぶ あなたと外へ出た
何度も何度も足が宙を切って落ちる
それでも空に向かって大きく足を振り上げる
パパはもうわかってる あきらめないのが大切だって
夕日の校庭 鉄棒に映る パパとあなたの影
夕暮れの校庭で、逆上がりに挑戦する父と子の影ぼうし-なんだか素敵です。
この詩は歌にもなっています。
あさ太郎さんと太田裕美さんの二人が歌っています。
YouTubeで<パパとあなたの影ぼうし>と検索し、聴き比べてみてください。
聴けば聴くほど、心に染みるいい歌です。
歌の中の「あなた」の姿が自分の姿と重なります。