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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第34号

2023.10.12 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
前号で『5年生の女の子』のお話を紹介しました。
今回も、『保健室ものがたり』から、『小学1年生のひかりちゃん』のものがたりを紹介します。


小学1年生のひかりちゃん

小学1年生のひかりちゃん
いつものように登校するとまっすぐ保健室にやってきて
ソファにちょこんと座ったひかりちゃん
「抱っこして」 これもまたいつもどおり
「どうした?」
「なんだかわからないけど抱っこしてほしい」
小さな声 でも私には聞こえる
私の胸には届いてるよ ひかりちゃんのなんだかわからないもの
私はあなたのお母さんにはなれないけれど ぎゅっと抱きしめる
ひかりちゃんは お父さんがいません
ひかりちゃんは お母さんがいません
おばあちゃんがひかりちゃんを一生懸命育てています
おばあちゃんはとてもひかりちゃんを大切にしています
でもおばあちゃんは腰が痛くて 横になっていることが多いから
ひかりちゃんはおうちでがまんしているのかもしれません
「抱っこして」
おばあちゃんにはもう重くなりすぎた1年生のひかりちゃん
だから言わないでがまんしているのかもしれません
「抱っこして」……


私が抱っこしながら教室に行くのが日課です
「ひかりちゃんだけいいな」
そんな声も聞こえます
「ごめんね じゅんぐりね 今度抱っこするからね」
「なんか甘えん坊だ」
そんな声も聞こえます
「いっぱい甘えると いつか甘えん坊を卒業できるからね ごめんね みんなも本当は甘えん坊の気持ち持ってるよね」
お父さんがいる子も お母さんがいる子も さみしい子はいっぱいいます
だってね 内緒だけど おとなの先生だって さみしいとき,あるんだよ

私にできることは 抱きしめること
必要とされるあいだ ずっとずっと 抱きしめること
いつかひかりちゃんも「抱っこ」って言わなくなる日が来るでしょう
「やあだ 恥ずかしい」 そんなふうに言う日も来るかしら?
その日まで私はぎゅっと抱きしめます
本当のお母さんではないけれど

※ イラストは『保健室ものがたり』からお借りしました。


『保健室ものがたり』こんのひとみ著(ポプラ社2006)p.014

このものがたりを読むと、東日本大震災から4年を経た2015年度に勤務した宮城県沿岸部の中学校のことを思い出します。
その年、その中学校にAさんという小柄な女の子が入学してきました。笑顔がすてきな活発な女の子でした。
東日本大震災で両親を亡くし、祖父母に育てられていました。
暗い表情を一度も見せることなく、気丈に振る舞っていました。

中学1年の英語の教科書には、motherやfather、そして、brotherやfamilyなどの新出単語が出てきます。これらの単語が出てくるたびに、「Aさんはどんな気持ちでこの単語を学ぶのだろう」と想像して、胸を痛めたものです。
英語だけではありません。国語や社会、道徳、そして、日々の連絡などでも「お父さん」「お母さん」ということばを耳にしない日はほとんどありません。

Aさんのように大震災で両親を亡くした震災孤児(発災時18歳未満)は、岩手県で94人、宮城県で126人、福島県で21人にのぼります。父親か母親のどちらかを亡くした震災遺児も、上記3県で1537人もいます。両親の離婚や家庭の事情で祖父母に引き取られている子どももいるでしょう。さみしさに膝を抱えている子どもがたくさんいます。

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