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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第33号

2023.10.05 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
絵本『くまのこうちょうせんせい』などの作者であり、シンガーソングライターとしても活躍するこんのひとみさんをご存じですか。
今回は、こんのさんが全国の小学校や福祉施設を訪ねて出会った子どもたちや養護教諭から寄せられたメッセージをもとにまとめた『保健室ものがたり』の中から、5年生の女の子の物語を紹介します。


5年生の女の子

「お腹痛いんですけど」
3時限目の終わりに入ってきた5年生の女の子
ベッドで横になって眠っていると思ったのに 小さなすすり泣きが聞こえてきた
じっと耳をすましながら思います
どうしたのかな?
心と体はつながっているから 心の悲鳴が体に伝わること あるよ

しばらくして のぞいてみる そうっとカーテンを引いてみます
「すごく痛いの?」
「うううん」
おでこに手を置いてから 体温計で熱をはかって お腹に手をあててみます
「腹痛だからって簡単に考えちゃいけないのよ 急いで病院に行かなきゃならないときもあるからね」
話しかけながら 目尻にたまった涙の行方を追います
「何かあった? 心配事とか 先生に話せることあったら聞くよ」
「先生だったらお腹さわってもいやじゃない……」
消えてしまいそうな小さな声
「お腹だいじょうぶならソファのところにおいで」
こっくりうなずいた顔が少しほっとしたように見えました
「先生このソファいっぱい傷がついてるよ 先生 心も傷つくよね」
「傷ついちゃったって感じたことある?」
「あるよ お父さんがお酒飲んでるときにあるよ」
言ったとたんに涙がぽろっとこぼれました
「泣いていいよ 先生のひざでよかったら思いっきり泣いていいんだよ」
堰を切ったように声をあげて泣き出した背中をさすりながら
『泣き終わったら先生と一緒にどうしたらいいか考えようね』とそっと心に思います
涙が私のスカートにまでしみてきます

家でも教室でもがまんしてたんだね 一人でよくがまんしたね
どうか この傷つきやすい心と体を
この傷つきやすい時期の子どもたちを 守ってあげてください
祈るような気持ちになるときがある
『何があっても 自分の心も 自分の体も 決して嫌いにならないでね』
あとできっとそう伝えよう
でも今は泣きなさい 思いっきり泣きなさい
声がかれるまで泣いて
あなたが顔をあげるまで先生はずっと待ってるからね

今日の天気は曇り 厚い雲が空一面覆っているけれど
雲の上にはいつも太陽があることを忘れないでいようね

※ イラストは『保健室ものがたり』からお借りしました。


『保健室ものがたり』こんのひとみ著(ポプラ社2006)p.022

胸が締め付けられるような5年生の女の子のものがたりです。
女の子は、そのちいさな体と心に、どんな苦しみを抱えているのでしょう。
何に傷つき、つまずき、悩んでいるのでしょう。
あせらず、ゆっくり寄り添っていくことが、おとなの側に求められているただ一つのことだと思います。でも、その「寄り添うこと」が簡単にできそうで、一番むずかしいのです。ほとんどの先生方がそう実感しています。
「夜回り先生」で有名な水谷修先生は、『夜回り先生の卒業証書』(日本評論社2004)の中で、次のように言っています。
「悩みを抱える子どもたちに多くを語らせ,また多くを語ることは危険です。ことばは意識をさらに自分の中へと向かわせます。」

子どもたちが心をひらくまで、じっくり待つこと。子どもたちをまるごと受け容れられる大きくて広い心をもつこと。子どもたちの心や体に寄り添うエキスパートー保健室の先生としっかりつながること。すべては、子どもを心の真ん中にすえることから始まります。

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