仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第28号
2023.08.24 THU
通信教育指導室から、こんにちは。
授業名人の有田和正先生にも、自分の思いがなかなか伝わっていかない難敵がいます。それが今日登場するA君です。そのA君を「追究の鬼」に仕立て上げるべく、有田先生の悪戦苦闘が始まります。
宿題は「試食すること」
● 子どもの事実をさぐり続けよ
「子どもの事実」をとらえ、これにのっとった授業をしなければ、子どもは生き生きと追究しない。いくらよい教材だといわれるものでも、子どもの実態にマッチしていなければ、よい教材とはいえない。
わたしは教材開発の原点は、常に一人の子ども、それも、学習にのってこない子どもを意欲的にしようと考えることである。動かない、学習を面白がらない子どもを、面白がらせようと考えるところから出発する。難敵A君の登場である。
● A君を熱中させるネタ研究
わたしは、何としてもA君を熱中させたいと考えた。
A君は、給食の時間は、とても意欲的だ。食べることには強い興味を示す。このことを何とか使えないか、と考え続けた。
ある日、家の近くの店の前を通りかかったら、
「今日のメロンはおいしいよ。一切れ食べてごらん」
とさかんにすすめるのだ。
それで、一切れ食べてみると、なかなかおいしい。
そのとき、ふっとひらめいた。これをA君に課したら――。
一人ではだめだ。勢いが出ない。友だちと一緒に行けない。
そうだ。クラス全員の「宿題」にしよう。
●A君、動き始める!
宿題は、月曜日に出した。
A君は、早くも月曜日に試食に出かけた。母をひっぱり出してーー。
今日は、お母さんと、「ししょく」のべんきょうにいきました。 (2年 A)
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食べるだけかと思ったら、「店の人ですか」なんて聞いている。
ちょっぴり、「それが、うる人のねらいかな」ということも、頭をかすめている。
わたしは、1週間しないと、わたしのねらうものが出てこないと予測していた。つまり、「なぜ試食などをさせるのか?」ということに気づくには、1週間くらい続けないとダメだと考えた。
●A君、本気で追究
今日も、デパートで、「ししょく」のべんきょうをしてきました。 (2年 A)
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それにしても、最後は、お茶の試食で「ごちそうさま」とは、よくできている。ユーモアもある。たのしんでいることがわかる。
A君は、スーパーマーケットを数軒、デパートも数軒まわっている。もちろん試食のためである。A君の試食に対する執念は、相当なものであることがうかがえる。
こういう動きをしているうちに、A君も、試食のねらいに気づき、コマーシャルや広告に注目するようになってくるはずである。急がないことである。十分に試食させることによって、そのねらいに気づかせるようにすることが、大切である。
性急にねらいに迫らせようとすると、必ず失敗する。
そして後日、A君は、ついに「裏方の仕事」にまで気づいたのである。驚くべきスピードで、次々と新しいことを追究するようになった。「試食」の教材化は大成功であった。
「試食が宿題」なんて、さすがは有田先生。一石二鳥、三鳥のこんな「宿題」なら、子どもたちも大喜び。でも、保護者や同僚の先生方の信頼があればこそですよね。
うっている人にきいてみました。
お母さんは、