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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第18号

2023.06.08 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
今回も引き続き、子どもたちの読解力の問題について考えていきます。
RSTの結果から「子どもたちのAI読み」の問題に行き当たった新井紀子先生は、埼玉県戸田市の小学校などで共同研究を行いました。そこで、先生方の授業の進め方に課題があることに気づきました。


子どもたちのAI読みは、なぜ起こる?


ノートづくりより対話的な活動を重視

研究授業と授業後の話し合いの中で、新井先生はあることに気づきました。
授業をした先生だけでなく、授業を参観した他の先生
方も、授業中にノートをあまり取らせていないのです。活動や作業を優先し、学習のまとめはプリントやワークシートを配布して済ませているのです。
理由を尋ねると、「黒板を写す活動はアクティブラーニングではなく、一方的な教え込みなので」「黒板を写す時間がもったいない。話し合いの活動に時間を割いたほうがいい」「ICTではコンテンツを次々に投影するので、ノートを取ることはできない」などの答えが返ってきました。


「一人も置き去りにしない」ための工夫

授業の中で黒板をノートに写させると、かかる時間がバラバラで、全員が写し終わるまで待つと早く終わった子どもは飽きてしまうし、早い子どもに合わせるとほとんど写せない子が出てしまうというのです。
いきおい、「一人も置き去りにしない」ため、そして、時間節約のために、熱心な先生ほど、授業のまとめとして下のようなワークシートやドリルを多用していたのです。


◆ 次の文が説明している言葉をア~エから選び、記号を書きましょう。

1(   ) 農業以外で働いている人が家族の中にだれもいない農家のこと。
2(   ) 農業以外で働いている人が家族の中にいる農家のこと。
3(   ) いろいろな品種のよいところを集めて、新しい品種をつくり出すこと。
4(   ) 水田を減らして米の生産量をおさえる政策のこと。

ア 生産調整 イ 兼業農家 ウ 専業農家 エ 品種改良

新井先生はワークシートやドリルの使用実態を把握するために、いろいろな自治体の小中学校で使っているものを集めました。それで「アッ」と得心がいきました。先生方の手作りのものも業者によるものも、文章を書かせるものより、穴埋め形式のものが圧倒的に多かったのです。
これでは、黒板に書かれた文章やスクリーンに映された文章を「文章として」読まなくても、キーワードを拾い読みすればプリントを埋めることができます。そして、キーワードを覚えれば、テストでそれなりの点を取れてしまうではありませんか。
「一人も置き去りにしない」ために、書く速度が遅い子どもに合わせて工夫してつくったプリントやワークシート類が、ノートを取れないまま卒業する小学生を大量に生んでいたのです。彼らはそのまま「ノートの取れない中学生」になります。中学校でも彼らを置き去りにしないためにプリントやワークシートを多用します。そして、そのまま「ノートの取れない高校生や大学生」になったのです。
こうして小中高の学びを経て、子どもたちは「キーワードを覚えてプリントを埋める」スキルとか「穴埋め式プリントを使ってテスト対策をする」スキルを身につけていったのではないかと思います。


富山県立山町の悩み - 小学校は学力が高いのに、中学校は…

立山町では、小学生の学力が県内でも特に高いにもかかわらず、中学生の成績が伸び悩んでいました。そして、この問題を解決するために、考えられるあらゆる方策を講じてきました。エアコンを県内で最初に中学の教室に設置したり、教員を加配したり、補習授業を実施したりと、環境整備に最大限努めてきました。さらに、RSTを活用した読解力向上の取組を始めたのです。


原因はプリント・ワークシートの多用

プリント・ワークシートの多用がかえって子どもの学力に悪影響を与えているのではないか、との印象が確信に変わったのは、立山町のRSTの結果を見たときです。
もしかすると、先生方が熱心さのあまり、プリントを作りすぎたり、ドリルをさせすぎたりした結果、小学校は『見かけの成績』が上がる一方、その後の伸びしろが小さくなってしまっているのではないか。課題はむしろ、中学校にあるのではなく、小学校にあるのではないか、と考えたのです。
小学校で日常的に使っているプリント類を確認すると、案の定、文で答えさせる箇所もありますが、キーワード穴埋め型のプリントがほとんどでした。


■ 補助輪は時機がきたら外さなくては

計算ドリル、特にあらかじめ桁がそろえて書いてある筆算ドリルは使いすぎてはいけません。ドリルには問題だけが書いてあって、それをノートに写させて、そこで筆算をさせるほうがいいのです。
筆算の初期のつまずきの多くが「桁をきちんと合わせないこと」「繰り上がりや繰り下がりを正しい箇所に書かないこと」にあるからです。だからといって、あらかじめ桁を合わせた問題をドリルの上で解かせてばかりでは、中学に上がったときに真っ白な答案用紙に自力で正確に計算する力はつきません。
小学生はまだ自分をコントロールするスキルが十分に身についていません。字を乱暴に書いたり、桁を合わせて計算するのが苦手だったり、ドリルの問題を正確にノートに写せなかったりします。
「自転車の補助輪」は、最初は必要ですが、どこかで外さなければなりません。それと同じです。子どもの発達はまちまちなので、補助輪が不要になった児童から、ノートや白い計算用紙で計算できるようにしていかなければ、伸びるものも伸びなくなります。


新井先生の結論-①小学校を卒業するまでに板書をリアルタイムで写せるようにすること。②小学校のうちに穴埋めプリントを卒業すること。そして、③中学校ではプリントは使わないことを目標にすること。 …… この結論に少しでも近づけるように努力したいですね。

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