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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第17号

2023.06.01 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
皆さんは、RST(リーディングスキルテスト)というテストのことを聞いたことがありますか。基礎的読解力を測るためのテストです。
実際の問題を紹介します。

【問1】
穀類・いも類・砂糖の主な成分は炭水化物である。
穀類・いも類には炭水化物のうちでんぷんが多く、砂糖はそのほとんどがしょ糖である。
この文脈において、「そのほとんど」とは何のほとんどを指すか、最も適当なものを一つ選びなさい。
A 穀類・いも類  B 炭水化物   C でんぷん   D たんぱく質

これはRSTが試す六つのスキルのうちの、「照応解決」の力をみるものです。
正解はメルマガの最後にあります。いかがでしたか。


教科書が読めない子どもたち - その原因は?

それでは、もう1問。この問題の正答率は、なんと中学生で12.8%、高校生で27.8%!

【問2】
下記の文を読み、メジャーリーグ選手の出身国の内訳を表す図として適当なものをすべて選びなさい。
メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である。

「28%がアメリカ合衆国以外の出身」ということは、アメリカ合衆国の出身者は72%ということが分かります。
そうすると、メジャーリーグ選手の出身国の内訳を表すグラフは一つしかありません。
落ち着いて読めば分かる問題なのに、正答率は驚くべき低さでした。
小学生から一流企業の会社員までの4万人のデータをみると、多くの人が④を選んでいます。
④は「アメリカ合衆国28%、ドミニカ共和国約35%」の図です。
つまり、「…のうち」や「…以外」という言葉を読み飛ばすか意味が分かっていないということです。
まさに「AIみたいな読み方」をしているのです。

RSTはプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の核をなす「東ロボくん」の開発過程で生まれた基礎的読解力を測るためのテストです。
学校や企業単位で、年間5万人以上が受験しています。
「東ロボくん」の生みの親・新井紀子先生(国立情報学研究所教授)は、RSTの結果を次のように分析しています。


キーワードの拾い読み = AI読み

教科書が読めていない子どもがたくさんいる、ということです。文章を読んでいるようで、実はちゃんと読めていません。キーワードの拾い読みをしているのです。「○○と○○と○○という言葉が出てきたら、こんなもんだろう」、というような読み方をしているのです。
前頁の【問2】でいうと、「…のうち」とか「…以外」といった機能語をきちんと読んでいないか、読めていないのです。これは実は、AIに近い読み方なのです。

そう言いながら、新井先生は、自分のスマートホンを取り出して、語りかけました。
「近くの、イタリア料理の店を教えてください」
画面に、イタリアンのレストランのリストがずらりと並びました。
続いて、新井先生はこんな注文を出しました。
「近くの、イタリア料理以外の店を教えてください」
すると、画面にはやはりイタリアンの店がずらりと並びました。

つまり、これは、AIが「近くの」や「イタリア料理の店」というキーワードに反応し、「…以外の」という機能語をきちんと理解していないために起こった現象です。


子どもたちのAI読みは、なぜ起こる?

子どもたちの「キーワード拾い読み」、もしくは、「AI読み」は、なぜ起こるのでしょうか。
分かりやすい例として「プリント学習」を思い浮かべてください。「蛍光ペン型学習」などもそうです。
これを一生懸命やっていると、【問2】のような問題であれば、「アメリカ」「ドミニカ」などの【キーワード】や「28%」「35%」などの【数字】から推測して、「たぶんこうだろう」と考えて答えを導いてしまうわけです。
まさにAIのような読み取りと解き方をしているのです。
ICTを活用した授業づくりや英語科の授業、プログラム学習など、ますます忙しくなる学校現場。
ワークシートを使った穴埋め型学習の多用。
「AI読み」の問題は、当分解消しそうにありません。なんとかしないと。


参考:『AIvs.教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著 2018)

こたえ

【問1】のこたえ:B / 【問2】のこたえ:②

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