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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第12号

2023.04.13 THU

「あのー、テキストはどうやって買うのでしょうか」
「すみません。まだ教科書がないんですが」
「テキストがないので、4月15日までにレポートは書けません」

オリエンテーションに参加した2年生のこの言葉から、すべては始まりました。

「うん? なに?」
「テキストがないって、どういうこと?」
「学費を納めれば、テキストが送られてくるんじゃないの?」

説明を終えて、ほっと一息。『学生調書』を受け取っていた私たちに衝撃が走りました。
テキストの購入の仕方について何の説明もなかったことに困惑し、不安をかかえる学生たちの気持ちも知らず、能天気にも、私たちは「明日からはレポートの添削指導に忙しくなるぞー。頑張らなくちゃ」などと張り切っていました。

そうです。昨年度までは学費を納めれば、テキストが無償で学生の手元に送られてきたのですが、今年から学生が自己負担でテキストを購入することになったのです。
そんなシステムの変更にも気づかず、
「何事もスタートダッシュが肝心。4月15日までにより多くのレポートを提出しよう」
などと、能天気に、オリエンテーションの最初から終わりまで、叱咤激励の旗を振り続けていたわけです。


彼を知り己を知れば百戦殆うからず

このことばは、中国の春秋時代に編まれた兵法書『孫子』の中におさめられています。
「相手方と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない。
敵情を知らずに味方のことだけを知っているのでは、勝ったり負けたりして勝負がつかない。
敵のことも味方のことも知らなければ必ず負ける」
という意味です。

教育の世界でも、これに似たことばがあります。
「生徒指導は、児童理解に始まり、児童理解に終わる」
ということばです。
この「生徒指導」を、「学級づくり」や「授業」と置きかえても、ことの本質は伝わるはずです。

今回のオリエンテーションから、改めて学んだこと。
まず、相手(学生の困りごとや不安)を知ろうと努力すること。
共感的な理解からすべてが始まるということ。
恥ずかしいのですが、《 反面教師 》 にしていきたいものです。



私たちの大失敗に関連して、《 子ども理解の大切さ 》 について、筑波大学の田中博史先生の著作から紹介しましょう。
田中博史先生は算数教育の達人です。
このメルマガでも、先生が提言する授業のアイデアやヒントをたくさん紹介していきます。



子どものほんとうの姿を見るヒント

ベテラン教師とよばれるようになった私にも、もちろん子ども時代というものがあり、小学校にかよっていました。何十年も前のことですし、ひとつひとつの出来事をきちんと記憶しているわけではないにせよ、その子ども時分の私が親や教師に対して感じていたことは、教師という仕事において少なからずヒントになっています。
親や教師に接しているときに、なにを考えていたのか、どう感じていたのか。なにをされたときにうれしくて、なにをされたらいやだったのか。
楽しかった思い出はもちろんのこと、ときには苦い思い出も、私が子どもに接するときに大切なことを教えてくれるヒントになっています。
小学校時代の苦い思い出として私がまっさきに思い出すのは、ある音楽の先生のことです。その先生に授業中いつも怒られていて、子ども心にそれはもう地獄のような時間でした。
「この子は人の話を聞かないで、動きまわる子だ」、そういう固定観念をもって見られていたので、ちょっとクラスがざわついたりすると、いつも私に注意の矛先が向かってくるのです。
だから、音楽の授業にいくときはいつも「今日は怒られないようにしよう」とおとなしくしているのです。でも、ななめ後ろに座っている子どもがふざけて私をちょんちょんと突ついてくる。
それで、その子のほうを向いて「いや、だめだって、やめたほうがいいって」と言うと、それを見た先生からすかさず「ほら、またちょっかいを出して」と私が怒られるというパターン。
固定観念をもってみると、一事が万事、すべてがそのように見えてくるということがあるわけです。

親が子どもを見るときも同じことが言えるでしょう。兄弟でケンカをしたらいつも「お兄ちゃんが悪い」となるとか、この子は整理整頓ができない子だとか……。

子どもに接している大人がいったんそのような固定観念をもってしまえば、子どものほんとうの姿が目に入ってこなくなるということがあるのです。


『子どもと接するときにほんとうに大切なこと』(田中博史著 東洋館出版社2018)p.112 一部編集

教師の思い込みから生まれることは、プラスのことより、マイナスのことのほうが圧倒的に多いようです。
2023年9月30日(土)、田中博史先生がおとなりの福島県郡山市にやってくるそうです。参加してみてはどうですか。

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