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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第09号

2023.03.16 THU

通信教育指導室から、こんにちは。
皆さんは、日本理化学工業という会社を知っていますか。
学校で毎日使われているチョークを作っている会社です。社員は全部で90名。うち、障がいのある社員は63名だそうです。
日本理化学工業が障がい者を雇用し始めたのは、どんなきっかけがあったのでしょう。

生徒を思う熱い気持ちに心動かされた

日本理化学工業会長 大山 泰弘

1959年のある日のこと、養護学校の先生が私のもとを訪れ、「生徒を就職させていただけませんか」と懇願されました。
しかし私自身,福祉や障害者のことを何も知りませんでしたので、「お気持ちはわかりますが……」と丁重にお断りしました。
しかし、先生はあきらめませんでした。
数日後、再びやってきて、「就職を」と頭を下げられました。
私は、内心「困ったな・・・・・・」と思いながらも、再度お断りしました。
それでも三度、先生はやってきました。
そして、こうおっしゃったのです。

「もう、就職をとは申しません。せめて働く体験だけでもさせていただけませんか。あの子たちはこの先、親元を離れ地方の施設に入ります。働くということを知らないまま、一生を終えてしまいます。一度だけでも、働くということを経験させてやりたいんです」

私は先生の熱意に動かされ、「2週間なら」ということで、就業体験を受け入れたのです。

就業体験の初日、先生に連れられて、二人の15歳の少女と親御さんが会社へやってきました。
先生と親御さんは、「よろしくお願いします」と何度も何度も頭を下げられました。
二人の少女は恥ずかしそうにオドオドしながらうつむいていました。

彼女たちにやってもらったのは、完成したチョークを収める箱にシールを貼るもっとも簡単な仕事です。
私は、それでも心配で、ときどき二人の様子を見にいきました。
すると、二人は一言も口をきかず、無心でシールを貼り続けていました。
お昼休みのベルが鳴っても手を止めようとしません。
「もう、お昼休みだよ」と従業員が肩をたたいて、やっと気づくほどでした。
ちょっとした失敗でも、居場所のないように身を縮ませるので、「そんなに気にすることじゃないよ」と言うと、心底ホッとした表情を見せます。
そして、仕事が終わって「ありがとう。助かったよ」と声をかければ、心から嬉しそうな笑顔で応えてくれました。
その姿には、どこか、私の心を打つものがありました。

就業体験の二週間は、あっという間に過ぎました。
「何事もなく、二人をお返ししなければ」と思っていた私は、正直ホッとしました。
ところが、最終日の終業後、二人を世話していた社員が私のところにやってきて、こう言いました。
「この子たちを正社員にしてあげてください」と直談判を始めたのです。
驚いて理由を聞くと,「私たちは,彼女たちに働くことのすばらしさを教えられた」と言うのです。
「つまらない仕事でも,あんなに楽しそうに,一心不乱になって働いている。
彼女たちができないところは私たちが全員でカバーしますから,辞めさせないでください」
唐突な申し入れに私は戸惑いました。
腕を組んで考え込んでいると、「これは、社員の総意です」と迫ってきます。
「ほんとに大丈夫か?」と念を押すと、「大丈夫です。だんだん慣れてくるはずですから」とにこやかに応えます。
その笑顔に観念した私は、「それなら」ということで、二人の少女を正式に採用することに決めたのです。

働くことで得られる幸せ

障害者を雇うようになって数年経っても,彼らがなぜ喜んで工場に通ってくるのか,私は不思議でなりませんでした。
工場で働くよりも施設で暮らしたほうが幸せではないかと思っていました。
言うことを聞かないため「施設に帰すよ」と言うと,泣きながら嫌がる障害者の気持ちがわかりませんでした。

そんなとき,ある法事で禅寺のお坊さんと席が隣合わせになり,その疑問をぶつけたことがありました。
するとそのお坊さんは即座に

幸せとは,
1.人に愛されること
2.人に褒められること
3.人の役に立つこと
4.人に必要とされることです。

愛はともかく,あとの三つは仕事で得られることですよ。

とおっしゃったのです。私はその言葉に深く納得しました。

働くことは自分のためであるが人のためでもある。
企業が利益を追求するのは当然ですが,同時に社員が幸せを求める場でもあると考えるようになりました。



『週刊東洋経済』(第6182号 2009年1月17日 「人は働いて幸せを知る」 *紙面の都合上一部編集

幸せとは、愛されること、褒められること、役に立つこと、人に必要とされること。

皆さんが新米先生として教壇に立つとき、このことばをしっかり心に留めて、子どもたちに相対してほしいと思います。
教室の中で一人一人が「褒められ」「役に立ち」「互いに必要とされる」、そんな学級づくりをしてほしいと願っています。
そして、皆さん自身も、「努力が褒められ(認められ)」「役に立ち」「必要とされる」、そんな環境の中で、人間力と指導力を高めていけるといいですね。

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