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仙台大学通信教育指導室メールマガジン 第07号

2023.02.28 TUE

通信教育指導室から、こんにちは。

一つの言葉、人との出会いが、人生を大きく左右することがある


みなさんにも、自分の生き方に大きな影響を与えた人との出会いが、きっとあるはず。
今回は、中学、高校時代は鳴かず飛ばずだった有森裕子さんのエピソードを紹介します。

アリモ!アリモ!-声援が後押ししてくれた

初めて出場した1992年のバルセロナオリンピック。最後のモンジュイックの丘は厳しかったです。
あのときはすべてが初めてで、本当にきつかったのです。
途中、36キロぐらいから足が止まりそうになり、息も切れてきました。
でも、沿道から聞こえる応援がものすごかった。
日本人の応援じゃなくて、地元のスペインの人たちの「アリモ、アリモ」の声援がとにかくすごかったのです。
懸命に走っていると聞こえるじゃないですか、「アリモ、アリモ」と。「あんた、どっか抜けとるから、『リ』ひとつ要らんわ」と言って付けられた、「アリモ」というあだ名が。「すごい!外国ではゼッケン番号を見て、あだ名で応援してくれるんだ」と、ものすごくうれしく、元気がわいてきました。
後で分かったのですが、スペイン語で「アニモ!」とは、「頑張れ」のことです。選手たちを励ます地元の人々の応援を、私が勘違いをして、自分の力に変えていたのでした。

小学校の先生と陸上との出会い

小学校時代の私は、興味を持つポイントややらねばならないことの優先順位が他の人と違っていました。そのころ「学習障害」という言葉があったら、もしかしたら当てはまっていた子どもの一人かも知れません。人と違うことに悩んでいた私に、体育を教えてくれた安藤伸一先生が声を掛けてくれました。

先生:どうしたんな。元気ねえの。
私 :元気ねえんじゃ。
先生:何でな?
私 :先生、聞いてくれるん?
先生:聞いてやらあ

「○○ちゃんにはこれができて、私はできなかったから怒られた」と、私が愚痴を言うと、先生が最後に、「そうか、まあ頑張れや」と。後に何を言うわけでもない。ただ聞いてくれただけでした。でも、私にとってはスッとガス抜きになりました。私は「人と同じじゃないというのは、悪いことではないんだ。私は私でいいんだ」となんとなく思いました。
そんな安藤先生の目の前で頑張ってみたくなった私は、それまで入っていた手芸クラブをやめて、陸上クラブに入りました。それが陸上との出会いです。

高校時代の陸上部顧問 狩屋先生との出会い

陸上部には高校の3年間所属しましたが、地方の大会はすべて予選落ちしました。国体にもインターハイにも出場したこともなく、実績はゼロでした。
それでも、入部を希望したとき、「だめだったらやめえ。本当は要らんから」と言った狩屋先生から、「やめろ」と言われたことはありませんでした。
言われたのは、「アリちゃん、辛抱せえ」「とにかく粘れ」「あきらめるな」の一言です。
よう聞いとけ。あきらめんかったら、そのうち前のやつが嫌になっていつかあきらめるから、それを待て。落ちてくるから、それを拾えばいいんじゃ。横に並ぶじゃろうが、そうしたら今度はにらみつけるんじゃ。 もっと嫌になって後ろに下がるから、前に出れるんじゃ。勝つ可能性はあるんじゃ。 おまえのええところは、全員があきらめるまで、あきらめん、その気持ちじゃ。早う走れんでもそれはできる。とにかく今が辛抱じゃ。
「アリちゃん、辛抱」がワンセットでした。あきらめないことの大切さ、「お前はそれができる」「それが大事なんだ」ということをものすごく言われたのを覚えています。

リクルート小出監督との出会いと言葉

教育実習を終えて教員採用試験を受けるはずだった私でしたが、両親を説得して私を入れてくれる実業団を探し始めました。そして、採用条件が、「走りたければ誰でもいい。あとの条件はなし」というリクルートという会社を見つけました。先方は私のことなど全く知りませんでしたが、いい勘違いをしていただき、小出監督につないでくださり、4年の夏にお会いできました。

僕はやる気のある選手を探していた。うちには生まれ持った素質や肩書き、実績をもっている選手が山ほどいる。しかし、大事なのは、肩書きや実績じゃない。
大事なのは、今現在、その人が、常に物事に対して前向きに考え、次はこうしたいというやる気や強い意志をどれだけ持っているかなんだ。強い意志をもっていなかったら、バックグラウンドは何の意味もない。人間、大事なのは意志なんだ。
あなたみたいに実績のない選手に会うのは初めてだが、よくそれだけ根拠のないやる気をもっていたね。その根拠のないやる気を僕は形にしてみたい。
小出監督にこうおっしゃっていただき、入部させていただきました。
言葉や人との出会いによって、その後の生き方が変わってきます。自分もそうだし、相手もそうです。明日出会う人たち、子どもたちに、すてきな言葉や思いを、手を、かけていただけたらと思います。


『中学校』(全日本中学校長会編集)2011年10月号 紙面の都合上一部編集しました。

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